偏差値29

偏差値29の人語を操るサルが国公立獣医学部を目指す

5年前のブログに目眩がする

5年前、まだ高校2年生だった頃に開設したブログを発見した。典型的な三日坊主で、もはや存在すら忘れていたものだ。読んでいるうち当時の感情が蘇って、少し泣きそうになってしまう。懐かしいなあ。誰かのブログを懸命に真似た、明るく浮ついた文章が眩しい。内容はさておき、当時の素直さをあげつらって笑うのは、やや不誠実に思われた。

 

このブログを書いた翌月に首を吊った。当時は気づかなかったけれど、思えばなんらかの(抑うつ様の)精神疾患を発症していたのだろう。延々と、ほんとうに延々と繰り返される負の連想を止めるためには、もう死ぬしかないと思えるほど激しく精神を消耗していた。だから、このブログの投稿は意外だった。まさしくうつ状態の真っ只中にあって、これほどそれを感じさせずに、明るく振る舞えていたのかと素直に感心する。ひょっとすると、今の自分で思っているほど、当時は病んでいなかったのかも知れない。

しかし、先ほど、投稿を留まったとみられるブログの下書きがあるのを見つけた。そこには、今にも死ななんとする切実な心境が、叫ぶようにして綴られている。結局、現実世界はおろかインターネット上ですら、希死念慮を共有し不安を吐露することはできなかったのだ。それがあまりに哀れだから、わたしは拙いブログを笑えないのかもしれない。

自殺を企図して失敗して、おかげで今も生きている。うつ病と診断されてからは、治療によって比較的早期に軽快した。現在は寛解していて、国立大学の法学部に通っている。偏差値29だったらしい過去の自分は、そうやって少しずつ自分らしい生活と、正しい認知と自尊心を取り戻した。今は夜も眠れるし、風呂にも入れるし、部屋がゴミ屋敷になることもない。落ちぶれてしまったからには、大学受験で取り返さなければ、周りを見返さなければ、もう少しも価値がないんだと思っていた。そんなことはないと言いたい。そんなことはないんだ。決してレベルは高くないけれど、自分にあった大学に入ったと思う。先生にも友だちにも恵まれて、趣味のテニスも続けられて、いま、ほんとうに幸せだ。獣医学部でなければそもそも理系でもない進路を選んだけれど、何者かになれない自分を受け入れて、なれ合って、それで人生をやっていくことに、わたしは期待を持っている。

高校を卒業するまで、結局は獣医学部なんて夢のまた夢という成績だった。特に伸びることも落ち込むこともなく、はっきり言って勉強は得意でないままだ。それでも、大学受験は危なげなく果たせたし、そこでコンプレックスは精算しきったと思う。

ブログを発見したからには、きちんと終わらせようと思い筆を取った次第だ。逆転合格もドラマもなく、ただ淡々と生活を送るだけだが、先にも述べたようにわたしはいま幸せだ。だから、これでいいんだ。